(5)小学生

若い時、背がすっきりと高くスマートな欧米人も加齢とともに超肥満体型の方が多くなります。現在は若年層でも超肥満が多くなっていますし、日本でも昔は考えられなかった肥満児が増加の一途をたどっています。
また外国では日本食が肥満対策にもてはやされていますが、その理由を考えたことがありますか。
欧米人は人類史の中で狩猟を中心とした狩猟遊牧民族で肉食中心の食生活でした。そのため、腸でのたんぱく質の腐敗を防ぐために腸が短く胴短脚長の体型も出来上がってきたわけです。

一方、日本人は農耕民族です。米食中心に魚と野菜の食事であるため、ゆっくりと消化吸収させるために腸が長く、いわゆる胴長脚短の体型であったわけです。
最近は欧米型の食事や座位ではなく椅子での生活スタイルに変わってきたために欧米人のように胴短足長スタイルになってきてはいますが、腸の長さはそれほど変化しません。何世代もかけて変わっていくものです。
そのため、腸でたんぱく質が腐敗しその毒素が吸収されるためにガンも増加の一途をたどっています。食文化において、日本人は基礎代謝が落ちてくる40歳台以降、段々とあっさり系の食事に変わっていきます。欧米人はいくつになっても肉中心の食事です。この差が一方では超肥満体型となり、また一方ではスリムな体型となります。その基本が出来上がるのが小学生までです。

日本人は、諸外国の食文化をうまく取り入れ独創性のあるものを創り出す才能に優れた民族です。すき焼きやカレーライスなど枚挙にいとまがありません。
この日本人の器用さが和洋折衷の料理を生み出したのです。同じ肉でも焼くだけではなく角煮のように煮、しゃぶしゃぶのように茹、あるいは蒸す、炒めるといった具合にいろんな調理方法で料理します。その幅広いあっさり系からこってり系までの料理をしかもいろんな素材を使ってバラエティーある料理を食べ慣れているからこそ、基礎代謝の低下とともに、あっさり系へと食の好みが変化していくのです。

しかしながら、この30年間、核家族化が進んだこと、塾に通う子どもたち、女性の社会進出、外食産業、ファーストフード店、コンビニエンスストアーの進出という時代の流れで、今まで祖母から母へ、母から子どもへと伝えられてきた家庭料理、家庭での食事で培われてきた食事のマナー、食べ物と栄養の知識、食の文化が失われようとしています。結果、若年性糖尿病、肥満、高脂血症といった欧米型病気が子供たちを蝕んでいますし、そんな生活習慣病の下地を小学生の間に作ってしまいます。

このままでは将来的には元氣で長生きすることはできませんし、40歳過ぎたら生活習慣病オンパレードになってしまいます。
日本人が培ってきた食文化を今一度見つめ直さないと子どもたちの将来、日本国の将来は大変暗いものになってしまいます。
現在、食事中に水分を摂る食べ方が当たり前と思っている若い独身女性の方々にも考えていただくようにとの願いを込めて、いろんな角度から小学生にまで教育・躾しなければならないことを「食育」の観点から書いてまいります。

わが国では、昔から「知育・徳育・体育」が教育の基本と言われてきましたが、今それらに加えて注目されているのが「食育」です。
食育とは、ひとことで言えば食に関する教育ですが、単に望ましい食習慣のための知識を身につけるだけでなく、食卓での一家団らんを通じて社会性を育んだり、わが国の食文化を理解したりすることも含む幅広い教育です。
何故、食育が注目されてきたのかを農林水産省の「我が国の食生活の現状と食育の推進について」の報告書から見ていきますと、1つは栄養バランスの乱れです。

戦後の我が国は経済成長に伴う所得の向上等を背景に、食糧消費の割合は、主食の米が減少し、畜産物、油脂類が増加してきました。
昭和50年代中頃になると、平均的に見て摂取する栄養素のバランスがほぼ適切で、主食である米を中心に水産物、畜産物、野菜等多様な副食品から構成されるいわゆる「日本型食生活」が形成されました。
しかしながらその後は、量的に飽和状態である一方、米の消費減少と畜産物、油脂の消費増加が続き、栄養のバランスが崩れてきています。

2つめは食習慣の乱れです。その原因はこの30年間に核家族化が進み、社会構造や環境が様変わりし、女性の就労意欲の向上を背景に共働きが増え、結果、食の簡便化志向と団らんなどのない家庭における躾教育の場が失われた結果と考えられます。
現在、朝食の欠食率は男女とも20代が最も多いのですが子どもについても朝食の欠食は増加傾向にあります。
小学5年生では平成7年の13.3%が平成12年には15.6%に上がり、主な欠食の理由は「時間がないから」46.9%「食欲がないから」33.7%となっています。

朝食の欠食は、1回の食事の摂取量が多くなり、過食につながる可能性もあることから肥満児において、生活習慣病の発症を助長すること、午前中のエネルギー供給が不十分となり体調が悪くなるなど問題点が多く、子どもの頃から朝食を摂る習慣付けの必要性が叫ばれています。

3つめは食に関する知識の不足です。
アンケート調査によると食品選択や食事の準備に困らない知識・技術があまりない36.4%、全くないが6.5%合計で43%にものぼります。食の安全や安心に対する関心は高まる傾向にあるのに、知識・技術の習得には興味がない主婦が増えていますし、さらに箸を正しく持てる児童生徒の割合も低下傾向(小学生で44.4%)を示しています。このように家庭における食の教育力の低下やフードチェーンの多様化・複雑化で、国民個々の自主的努力に委ねるだけでは健全な食生活の実現が望めない状況に至ったため、学校教育にも「食育」を導入し、子どもの時から「食」について考える習慣を身につけるよう「食」の安全、「食」の選び方や組み合わせ方などを子どもたちに教える「食育」を推進することになってきたのです。
しかし本来は主に家庭で行うべき教育や躾であり、学校だけに任せるものではありません。家庭で取り組むべきことはしっかり躾してまいりましょう。

最近、キレる子どもが増え続けており、深刻な社会問題になっています。今回は、「キレる子どもはこうして生まれる」のお話を食育の面から取り上げてみます。


1.砂糖のお話
今、小学生で1日250ml清涼飲料水を4.7本摂っているとの調査があります。1本平均で砂糖23gですので、100gを超す摂取量です。
この砂糖の過剰摂取が「ペットボトル症候群」です。清涼飲料水を飲むと血糖値が一気に上がります。血糖値が上がるとのどが渇き、そののどの渇きを癒すために清涼飲料水を飲みます。一時的にはのどの渇きはとれますが、一層血糖値が上がり、その結果、さらにのどが渇きます。
このように悪循環に陥り、糖尿病性ケトアシドーシスになり意識の混濁などを発症します。
また逆に低血糖値症を起こすことも多々あります。これは砂糖の過剰摂取(ペットボトルだけでなく菓子類などからも)により、身体のメカニズムが狂った状態で、血糖値が適正値で止まらずに、かえって下がってしまうようになります。
血糖値が下がると集中力がなくなり、ボーっとしてしまい、判断力も鈍っています。こんな時、何か気にさわることがあると、イライラしたりムカつくといった精神状態を引き起こします。小学生の低血糖値症は、この30年で47%も増えています。


2.カルシウムのお話
家に帰っても一人ぼっちのかぎっ子や塾に通う子どもたちは、親から1000円ほどお金を渡されインスタント食品やハンバーガー、フライドチキンを売るファーストフードを利用したり、コンビニでお弁当を買ったり、スナック菓子を買い足したりしています。
欧米ではスナック類のことを「ジャンクフード」と呼んでいます。ジャンクの意味はガラクタ、低栄養を指します。スナック類には特にリン酸塩が多く含まれています。
問題はリンの過剰摂取により、消化管内で不溶性のリン酸カルシウムが生成され、そのためにカルシウムの吸収が阻害されます。 カルシウムの不足は、骨を弱めることはもちろん、イライラや情緒不安定を招き、すぐムカつくことになります。カルシウムには、神経の興奮を抑制したり、手足や心臓の筋肉の収縮にかかわる生理作用があります。カルシウムは集中力を高めるためにも欠かすことのできない栄養素なのです。カルシウムをきちんと摂取することはもちろん大切ですが、さらにカルシウムの吸収を妨げるリンを過剰に摂取しないようにしないといけません。

3.ビタミン・ミネラルのお話
「ハレ」と「ケ」をご存知でしょうか?
一昔前までは「ケ」=日常は質素に食べ、「ハレ」の日=非日常・お祝事の時にはご馳走を食べていました。それが社会構造の変化・共働きが増え、大手外食産業が隆盛を極めだすにつれ、食の簡便化志向がより一層進んできました。
たまに外食するのはもちろん良いのですが、日常の家庭での料理をしっかりとしないとビタミン・ミネラル不足をきたします。
ビタミンは車に例えると潤滑油です。ガソリンとなるたんぱく質や脂質、糖質をスムーズに燃やすために必要不可欠で体内では合成されません。 またミネラルは身体に必要なものが約40種類あり、11種類が多量元素、さらに量は少なくてもなくてはならないものを微量元素または必須ミネラルと言います。カルシウムや鉄といったものだけでなく亜鉛が少ないと味覚障害を起こします。
このようなビタミン・ミネラルはチェーン化した外食産業のメニューでは補えません。
アメリカに「マクバガンレポート」なるものがあります。その一節に「現在あまりにも多い添加物などの化学物質、脳の栄養バランスを崩すような加工食品の急増、また食品の過度な加工によるビタミン・ミネラルの不足、こういったさまざまな現代社会に特有の食品環境は、子どもの頭脳の働きと、心の働きを崩すことが明らかとなった。現代の社会では、間違った食事によって、子どもたちの心まで蝕んでいる。」

つまり、子どもの脳と心の正常な発達を妨げるのは、栄養素のバランスのとれていない食事、ならびにインスタント食品中の食品添加物や農薬、その他の化学物質であるということなのです。
「食は命なり、薬餌なり」と古来から言われています。
日本の将来を担う子どもたちを元氣にするのも、家庭での一家団らんの食事が基本ではないでしょうか。
今、日本人のライフスタイルは大きく変わって、子どもたちの生活習慣病も増えています。また、輸入食品、加工食品、調理済み食品など便利な食品がいつでも自由に求められるようになり、外食の機会も増加して、一見豊かな生活になった一方で、乳幼児期から若年成人を中心に食行動上の多くの問題が指摘されています。朝食の欠食、インスタント食品の摂り過ぎ、偏食、極端なダイエットなどです。
食の専門家は、日本の家庭における4つの「こ食」即ち、孤食(ひとり食べ)、個食(家庭がバラバラの食事)、固食(好きなものだけ)、小食(少食)を指摘しています。

かって日本の家庭で普通に見られた、夕餉を囲む家庭の団らんが消え、子どもたちは満腹はしていても、満足はしていない状況です。このままではいけないということで、「食育」の推進が国を挙げて各方面で行われるようになってきています。
実は「食育」という言葉は明治時代からあるのですが、現在の食育の概念は3つあります。
どんなものを食べたら安全か危険かを知り、選ぶ能力、これが1つめです。
2つめに躾です。核家族化が進んで箸が持てないとか伝承が廃れてきてしまって、もう家庭だけでは間に合わない状況です。
3つめは食糧問題、農業問題、エネルギー問題、人口問題、これらを取り囲む環境問題、リサイクル等、また日本は残飯世界一ですから、食育の守備範囲は大変広いものです。
日本の教育は三本の柱があって、知育・徳育・体育です。その中に「食」を通じての教育、躾とかマナーを含めていろいろな形で総合的に学校教育に取り入れる時代になったのです。

具体的には、味覚についての実践学習、食材、調理、配膳、マナーについての学習、食事を通じてのコミュニケーション能力の向上、食と心身の関係についての理解等々によって、正しい食生活習慣を身につけることです。
次に農業、漁業、食品加工などについて机上及び体験学習を通じて基礎的な知識を得ることです。
第三に、日本及び世界における食糧生産、自給と輸出入、南北における人口の増減、飽食と飢餓、環境と農漁業生産との関連を知ることにより世界の一員としての自分を考えることであり、小学校から中学校にかけて取り組みが始まっています。
「食育科」という教科を始めた小学校の取り組みを紹介します。

「甘くておいしい。先生、もっと食べていい?」「うわあ激辛!口の中がヒリヒリする」「にがーい。もう食べれないよー」
愛知県の西尾市立寺津小学校の食育科の授業。2年2組の教室で、子どもたちがサツマイモやカイワレやゴーヤ、パプリカといった野菜を少しずつ食べ、味やにおい、色など、感じたことを話し合っています。2年生のテーマは「野菜大好き」。野菜を育て、食べることの大切さを学んで、偏食を解消する狙いです。
「いろいろ野菜があることを知り、食べてみようと思わせることが目標です。」こう話す担任の大屋百合子教諭(51)は以前から、給食の食べ残しに野菜が多いことが気になっていた。
実際に文部省が調べたアンケートでも、小中学生の嫌いな食べ物ベスト10のうち8種類までが野菜で、1位はサラダ、2位が野菜炒めだった。 他学年の食育科も「長寿の秘密」(3年)、「米作り」(5年)など年間テーマが決まっている。

ところが、児童生徒と保護者にアンケート調査したところ、意外な事実が浮かび上がった。給食に嫌いな食べ物が出た場合、児童生徒の63.2%が「我慢して全部食べる」と答えたが、保護者に「嫌いなものを家で出したら」と聞いたところ、「我慢して全部食べる」は22.7%にとどまったのです。

寺津小の高橋正治校長は「学校だけでは限界があるという証拠。ただ子どもが変われば、親も変わるはず。家庭に影響を与えられるような授業にしたい」と意欲を見せている、とあります。
本来家庭で躾をするべきことが、こうして全国的に学校教育の中で取り組まれ始めています。国会でも平成27年6月に議員立法による「食育基本法」が成立し、これから加速度的に取り組みが広まってまいります。
明治の作家、村井弦斎が「知育」「体育」よりも重要だと説いた「食育」。学校にだけ任せるのでなく、家庭での躾と食育が何といっても基本となります。食育を通じて命と命の繋がり、命の尊さを実感させていくことが、いま求められています。

最近は、アレルギーの子どもが大変増え、また風邪引きやすい子が急増しています。今は、家屋の機密性が高まり、冷暖房完備で、夏はクーラーで涼しく、冬は暖房で暖かく過ごせ、「温室育ち」の外界からの刺激を受けなくて済むような生活になってしまっています。そのため、身体自体の温度調節能(働き)や適応範囲が狭くなって、急激な気温や湿度の変化に調節がうまくできなくなっているのです。
温度差だけでなく、現代社会のストレスに上手に対処していくためにも、ストレス刺激を受けてもそれに抵抗する力(ストレス能力)をより強くしておくことが必要です。
「温室育ち」ではストレス能力は育ちません。刺激を受けて鍛錬することが大切なのです。
昔、貝原益軒は「子どもには飢えと寒さを与えよ」といいました。これは「子どもは風の子」とか、「かわいい子には旅をさせろ」とかいったことわざにも通じるもので、ストレス能力の強化が健康につながることを意味しているものと解釈できます。
家庭では乾布摩擦で皮膚を鍛錬したり、呼吸を大きくすることを家庭で取り組んでいただきたいし、筋肉の発達する中高生になる前に、運動の習慣づけも必要です。そうしないと一見体格は良さそうでも瞬発力や持久力のない、ひ弱なストレスにも弱い身体になってしまいます。休日は運動しましょう!

また、これからの季節、冷房は内臓から冷えますので、窓を少し開けて入れるか、できれば冷房は冷風扇と考えて涼しい風さえくれば良いと思ってください。
夏はやっぱり汗をかき、スイカ・キュウリ・トマトなどで水分やミネラル補給することが一番ですね。
また冬場もぬくぬくと暖房せずに、衣類で調節するようにして、適応能力を高め、対応できる温度差を大きくしておくことです。
夏場にかけては、水分の摂取量が増えてきます。一度にがぶ飲みさせないように躾をしてください。またジュースは製氷皿にレモン汁をたっぷりかけて凍らせ、ブロックを食べさせますと、喉の渇きも少ない水分量で癒すことができます。元氣で長生きの基本習慣は小学生までが大切です。


(6)小・中学生

2005年度に「肥満傾向」と判定された小中学生の割合は、6歳から14歳の全年齢で、30年前の児童・生徒を上回っていることが、文部科学省がまとめた「平成17年度学校保健統計調査」で明らかになりました。
親の世代が小中学生だった時期を30年前の1977年と想定して、子どもの世代と親の世代を比べて、その現状を確かめた結果、男女ともに全年齢で肥満傾向と判定された児童が増えていたのです。最も差があったのが12歳で10.42%だったのに対し、親世代は6.64%だった。
また、内臓脂肪肥満であれば、表面的にはわかりづらい場合もあるので、肥満傾向の児童は実際にはもっと多いだろうと考えられます。
服部幸應先生が常に警告されているように、「食育」ができていない結果です。かっての日本では家族一緒に食事をし、同じものを食べるのが常でしたが、今は親子別々に好きな料理を食べている家庭が少なくありません。

服部先生は「個食」(バラバラ食)と呼んでいらっしゃいますが、こういう家庭では栄養に偏りがあるだけでなく、わがままで協調性のない子どもを育ててしまいます。
「こ食」には「個食」のほか「孤食」(家族が不在で一人で食べる)、「固食」(自分の好きな決まったものしか食べない)、「小食」(いつも食欲がなく食べる量が少ない)、「粉食」(パン中心の粉を使った主食を好んで食べる)があります。「こ食」になったら心と身体の赤信号。身体に悪いだけでなく性格まで変わってしまいます。
このところ子が親を殺害する事件が世間を騒がしていますが、「食育」に家族みんなが地域が取り組んでいかないと、益々凶悪事件が増え続けますし、ニートの問題もそうです。
食育がしっかりしていないと、教育の基本である知育・徳育・体育までがバラバラになってしまうのです。



ページトップへ戻る

全国に広がる日専同薬局・薬店ネットワーク 店舗検索はこちら