(7)中・高校生
年代別のポイントとしてこれまで、
●乳児期 ── 子どもと親を結ぶ絆としての食事
●幼児期 ── 食習慣の基礎づくりとしての食事
●学童期 ── 食習慣の完成期としての食事
を書いてきました。今回は青年期で、この時期は食習慣の自立期でもあります。
この時期はまさに育ち盛り、従って栄養素も最大に必要です。栄養素の不足や偏りなどで発育が抑制されると、後でその遅れを取り返すことは難しくなり将来の健康に悪影響を与えます。
また、発育・発達の上でも自分の考えに従った行動をとるようになります。母親の管理からも段々遠ざかっていき、学校給食も高校生になると受けなくなり、さらには受験を控え、生活が不規則になりがちです。その結果、自分で食事を選択するようになります。そのためには適切な食品の選択ができるように栄養知識を身につけておく必要があるのです。
中学生から高校生にかけての思春期は、自分たちの生活リズムに合わせて自分たちで食事をする機会が多くなります。特に受験期になると、塾通いのため夕食時刻が遅くなったり、外で済ませる機会も多くなり、一層食事リズムが不規則になりがちです。できるだけ家族での楽しい食事をし、人間関係を深めるよう心がけてください。
また、特に夜遅くまで起きていて、朝食が摂れない傾向があるのできちんと食べられるよう、夜食に甘いものや脂肪の多いものを避けるなど、夜食の摂り方にも気をつけることです。
生涯の中で急速に成長する時期ですので、特にカルシウムとゼラチン質(にこごり)の摂取を意識してください。
それでもファーストフードや外食をする機会が多く、家庭で食事をする機会が少なくなりやすいので、家庭で食べる時には、たっぷりの緑黄色野菜を摂るよう意識してください。
また、女子はダイエット志向が強くなり痩せたいと思うようになることが多々あります。
しかし、子どもから大人に変わるこの大切な時期は充分な栄養素をとって大人になる準備が必要です。
特に女性に多い貧血は造血に必要な鉄分が不足するところから起こります。太ることを気にして朝食を抜いたり減量のためサラダ中心の食事では低栄養状態となってしまいます。自分勝手な考えでダイエットをするのは大変危険です。
最近、肥満傾向にある中学生が増えています。
これは食事中の摂水による荒噛みから食べ過ぎること、脂肪含有食品の摂取が多いこと、間食が多いことなどの原因が考えられます。
肥満から内臓脂肪が蓄積し、高血糖・高脂血症・高コレステロール血症・高血圧・動脈硬化といった生活習慣病につながっていきます。
肥満傾向にあっても極端なダイエットは低血糖を起こしたり、拒食症のような重篤な疾患にもなりかねません。
食生活や食べ方・飲み方そして運動の仕方等に注意を払うことによって肥満の改善はできますので、安易に飛びつかず、必ずご相談ください。
(8)二十歳前後世代
将来に向けての身体づくりの大切な時期である二十歳前後。
この時期は、良質のたんぱく質とカルシウムやゼラチン質をしっかりと補い、筋肉と骨を強化しなければなりません。
しかしながら、男性は高脂肪食、ながら食いという食生活の乱れから脂肪貯蓄型肥満者の割合が増えています。
一方女性は10人に1人の割合でダイエットしていて、このうちの60%は“普通”、15%は“やせ”に判定されています。
また、特にダイエットしている人の脂質エネルギー比率が31.2%とダイエットしていない人に比べて高く、適正比率の上限とされる25%を上回っていますし、一日の食品の摂取量を比較すると、ダイエットしている人では米類や野菜類の摂取が少なくなっています。
カルシウム摂取量もこの時期が特に少なく、最大骨量を上げておかねばならない大切な時期であるのにこのままでは無生理や子どもの産めない身体になるのではと危惧せずにはいられません。
近年、美しさの基準から「丈夫であること」が除外され始めていると言われています。
この飽食から崩食の時代、食べ過ぎによる肥満を警戒することは重要ですが、容姿にこだわるあまり極端なダイエットに走る若い女性の増加傾向は問題です。
時流に乗ったつもりで細身の外見を一時は手に入れたとしても、やがて、貧血、めまい、たちくらみ、便秘、疲れやすいなどの症状が出るだけでなく、無月経、摂食障害(拒食症)など、危険なしっぺ返しが待っています。
健康こそが最高の美であることを忘れないでもらいたいものです。
それに骨太にしておかないと将来的には、骨粗鬆症にもなります。
女性は子どもを産みますので、カルシウムの消費が多く、一人産む毎に骨粗鬆症の確率は高まると考えられます。
将来に丈夫な赤ちゃんを産める身体づくりのためにも、貧血予防や美しい肌を保つためにも、朝食を抜かず、良質のたんぱく質と鉄分、カルシウムなどのミネラルやビタミンのバランスが大切です。
そのためには緑黄色野菜を多く組み合わせることが大切になります。
エネルギーを気にするならできるだけ低カロリーの素材や調理法を選び、三度の食事をしっかり意識して摂ってまいりましょう。
(9)二十歳代《歯周病》
日本人の成人の八割がかかっているといわれる「歯周病」。歯肉に炎症が引き起こされ、放置しておくと膿(うみ)が出たり、口臭がひどくなり、最後には歯が抜け落ちてしまう恐ろしい病気です。心臓病などを招く危険もありますが、虫歯と違って初期段階では痛みを感じることが少ないため、対応が後手に回りがち。中高年特有の病気と思われていましたが、食生活の変化から最近は若者での発症が増えています。
歯肉炎は、赤みを帯びた歯肉・腫(は)れてブヨブヨしている・歯磨き時の出血が特徴。
進行すると、歯肉の色が赤紫になり、歯と歯の間にすき間ができます。
原因は、歯と歯肉の境目の歯肉溝や歯と歯の間に溜まった歯垢(しこう)で、歯垢中の細菌が歯肉溝に侵入し、周辺組織を侵し始めます。
深くなった歯肉溝を歯周ポケットと呼び、そこで細菌がさらに繁殖し、ポケットが深まり…という悪循環が始まり最悪の場合、歯槽骨が下がり、歯がぐらぐら動き出します。
成人の歯は親知らずを除くと二十八本ですが、四十歳以降急速に減り、六十代では平均二十本。八十歳ではわずか八本です。
「歯周病は生活習慣病で、予防には歯周ポケットの丹念な清掃と歯石除去が必要」と岸本幸彦・歯科医師(神戸市中央区)は話す。
こまめに歯科に通い清掃をしてもらうことも大事ですが、大きな生活習慣の原因に唾液分泌不足があげられます。
よく噛まない・水分で流し込む食べ方・酸味の摂り方が少ない・温野菜の摂取量不足や、水分を摂り過ぎて胃腸の消化吸収率が落ち、結果、血液の質が劣化しているといったことです。
もともと、唾液には細菌に抵抗するリゾチームやラクトフェリン、歯を強化するスタテリン、ロ中の乾燥を防ぎ粘膜が傷つかないように保護するアルブミンやムチン、歯・口腔粘膜の細胞増殖促進因子EGFや神経節・神経成長因子NQFに末梢血液循環を良くするカリクレインなどが含まれています。
歯周病が進むと、いくら歯が丈大でも抜けてしまい噛む事が出来なくなってまいります。
将来の元気で長生きの為にも若い内に生活習慣を見直してもらいたいものです。
(10)二十歳代《骨粗鬆症》
「骨粗鬆症」という病気は老人のかかる病気だという印象を持っている人が多いと思います。しかし、若い女性にも骨粗鬆症予備軍が少なからずいることが調査でわかっています。特に日焼け止めの性能が良くなっているため、言わば全く日に当たっていないため、皮膚でビタミンDが生成されず、骨が弱っているとされます。
これは骨の形成能力の老化によるものではなく、彼女たちのライフスタイルに問題があるのです。
女性は特に骨粗程症になりやすいのです。女性ホルモンの中にエストロゲンというホルモンがあり、月経周期や妊娠などにその作用を発揮するとともに、骨の強さを保ち、腸からのカルシウムの吸収を良くしたりする働きも持っています。
このホルモンは閉経後、分泌が減少するために骨が弱くなってしまうのです。
女性が全員、骨粗鬆症になるかというと、そうでもありません。骨は三十歳代で、最大の骨量になります。これをピークボーンマス(最大骨量)といいますが、これが多いほど、骨粗鬆症になりにくいのです。
最近の若い女性の骨粗鬆症予備軍急増の原因は、骨形成の老化というよりも、
栄養の偏り(タンパク質やカルシウムの摂取不足)、運動不足などによります。
女性にありがちな「やせ願望」からくる無謀なダイエットによって生理が止まるなど、女性ホルモン分泌の変化なども、カルシウムの代謝を狂わせていきます。ピークボーンマスを増加させなければならない時期に、食生活を乱したり、運動不足になることは、何としても避けなければならないことがわかると思います。
いろいろな予防方法がありますが、特に食事について意識して欲しいですね。
最近は男性も体型の女性化が起こり、骨粗鬆症予備軍の心配があるようです。男性の食生活の乱れは、インスタント食品を常用したり、外食も同じメニューを毎日食べたりで、女性のダイエットよりも問題かもしれません。
カルシウムの貯金は若いときにするほど効果があるのです。今日の食事から、自分の食生活の中で骨量アップに向けて、カルシウムとコラーゲンたっぷりの煮こごりの摂取を心がけてください。